2018年8月1日水曜日

2018.8.1.夏季Glocal Fieldwork研修 2日目 を実施しました。

〜日本・大阪(地域社会)における多様性について学び、国際社会の一員になるには何が必要なのかを感じ・考えよう!〜

2日目のプログラムは…
1)イスラム教入門
2)大阪茨木モスク訪問
 ①モスクの指導者イマームのお話
 ②モスクに通うエジプトからの留学生2人のお話
3)コリア国際学園(KIS)について知る&在校生の思いと経験に学ぶ
 ①卒業生・佐藤芙優子さん(Fiji留学、写真展、大学での活動)
 ②KIS+千里高校の高校2年生(哲学カフェの活動の紹介)
 ③交流会
4)今日のふりかえり
でした。

1) イスラム教入門
まず、大阪モノレール豊川駅で集合し、徒歩でコリア国際学園に向かいました。そして、音楽室を貸していただき、イスラム教の基礎知識を学びました。講師は、とよなか国際交流協会職員の山根絵美さんです。
山根さんはドイツへの留学時に移民の存在を意識し、その後9.11同時多発テロの際に移民の多くを占めていたイスラム教徒が批判の的とされる事態を経験されました。その中でイスラム教についての関心が強まり、研究を始められました。

お話の主な内容を引率教員のメモから紹介します。
・世界のムスリム人口は約16億人で、4人に一人の割合(2013年の推計)
・人口上位は、インドネシア・パキスタン・インド・バングラデシュで、68%はアジア
・イスラームとは、アラビア語で、唯一神アッラーに帰依することを意味する。
・社会のあらゆる面で、天国に行くために何をすべきかを細かく決めている。つまり、信仰と日常の生活が密接に結びついている。
・イスラーム圏での共通の挨拶「アッサラーム・アライクム」は、あなたの上に平和をという意味。
・六信とは、唯一神・天使・諸啓典・預言者・来世・定命。諸啓典には、コーランの他に旧約聖書と新約聖書も含まれる。預言者には、ムハンマドの他に、ノア・イエス・モーセなども含まれる。善行を記録する天使と、悪行を記録する天使が肩に乗っていると考える。
・五行とは、信仰告白・礼拝・喜捨・断食・メッカ巡礼。行動に移すことを重視。1日5回の礼拝は、生活から離れて神様と精神的に繋がる時間。リラックス・リフレッシュの側面もある。
・イスラーム法における5つの範疇:義務・推奨・許可・忌避・禁止。殺人・飲酒・豚肉食は「禁止」、礼拝・断食・喜捨は「義務」の範疇に入る。ハラールは「許可」の意味。
・服装:人間は弱いので、誘惑に負けないよう、美しい場所は隠しておく。
・イスラームの中の多様性:国・出身地や家庭によって、ルールの運用は多様。
・イスラームの魅力:弱い者・困っている人を助けるのは当たり前(助けてもらうのも当たり前)と考える。分け隔てなく(服装もその表れ)、そして分かち合う(喜捨)。おもてなし精神が強い(友達の友達は友達)
・日本の中のムスリム:推定17万人(日本人4万人を含む)。第二世代以降のムスリムも推定約2万人。約半数は関東地方に住んでいる。東海、近畿がそれに続く。定住傾向が強まっている。
・日本の中のモスク(イスラム教の礼拝所・アラビア語ではマスジド):34都道府県に81箇所(201411月現在)。半数近くは関東にある。礼拝の他に、コーランやアラビア語の学習会も。災害支援活動を積極的に行うモスクもある。
・日本に暮らすムスリムの子どもたち:推計2万5千人以上。
・日本での生活で抱える課題:ハラールフードの確保、給食への対応、礼拝の場所、ラマダン中の学校行事、イスラームに対する偏見等。ゼラチンは豚由来、アルコール入りの醤油がある、豚エキスの入ったポテトチップスがある、漢字による食品成分表示は難しい。
・より良い社会を作るために:具体的な出会い・対話が重要。情報を鵜呑みにしない。多角的に物事を捉える力が重要。
・イスラームをよく知るためのオススメ資料:『サトコとナダ』はネット上で読める漫画です。アメリカの大学に留学しルームシェアすることになった日本人とエジプト人が主人公です。335話ありますが、面白いのでどんどん読んでしまいます。他に『となりのイスラム』『日本の中でイスラム教を信じる』『お隣のイスラームー日本に暮らすムスリムに会いに行く』が紹介されていました。

2)大阪茨木モスク訪問
 ①モスクの指導者イマームのお話
 ②モスクに通うエジプトからの留学生2人のお話

徒歩約10分のところにあるモスクに移動。住宅街にあり、外見も少し大きめの民家です。上は袖付きの服、下は長ズボンの服装であることを確認して、玄関で靴を脱いで一階の広間に入らせていただきました。普段は、1階は男性の礼拝所、女性は2階を礼拝所としているとのことでした。


①モスクの指導者イマームからは、大阪大学の留学生が多いことからこのモスクが作られたこと、聖地巡礼の様子、ラマダン明けの食事会の様子などを教えていただきました。また、コーランの一節を朗読していただいたり、デーツ(ナツメヤシのドライフルーツ)をごちそうになったりもしました。

②モスクに通うエジプトからの留学生2人からは、研究室での礼拝の時間の様子、エジプトではどう男女が出会うのか、モスクに来ると懐かしい食べ物が手に入ることなど、経験を通したお話を、とても美しい日本語で聞かせていただきました。

3)コリア国際学園(KIS)について知る&在校生の思いと経験に学ぶ
 ①卒業生・佐藤芙優子さん(Fiji留学、写真展、大学での活動)
 ②KIS+千里高校の高校2年生(哲学カフェの活動の紹介)
 ③交流会
再度KISに戻り、昼食をとったあと3つ目のセッションを始めました。

    佐藤芙優子さんは今年、KISを卒業し、現在は慶應義塾大学の看護医療学部に在籍中です。この時間のために夜行バスで大阪に戻ってきてくれました。
    佐藤さんは、
・フィジーにあるKISの姉妹校に留学したこと
・高校在学中にクラウドファンディングで資金を集めてマイノリティーとされる人の個々人の人柄に焦点を合わせた写真展を開いたこと
・フィジーの同い年の友達から。子どもができて学業を続けられなくなったと聞いたこと
・「若くして母親になるため夢を諦めないといけない女性や、生まれる環境が違うだけでなくなってしまう命を無くしたい、しかし、自分には経験・知識・技術のどれもがない」という思いを持ったこと
・助産師の資格を取るために大学を選んだこと
・助産師のインターンとして働くためアフリカのガーナに6週間行くことにしたこと
・「どの視点に立ち、誰を守りたいのか」=自分の軸を見定めるために行動していること
…を話され、そして「みなさんの軸は何ですか?」という問いを投げかけられました。

    次に、KISと千里高校の2年生5人が、KISの学生が主催している「哲学カフェ」の活動を次のように紹介してくれました。



・哲学カフェは、「国籍年齢に関係なく誰でも歓迎し、テーマ(人生・人はどうして悩むのか等)に沿って自由に、時にはゆるく、時には深く話し合う場」。
・今年の春休みに「高校生のためのお泊り哲学カフェ」が高校生10名、サポーター7名で実施された。1日目はアイスブレーキングのあと、ドキュメンタリー映画『蒼のシンフォニー』を鑑賞、朝鮮民主主義人民共和国について話した。2日目は、慰安婦問題についてのレクチャーを聞いたあと、話し合いをした。
・得られること:共感、自分の考えへの気づき、新しい考えを知る、影響を与え・与えられる。
「高校生のためのお泊り哲学カフェ」には、報告してくれた2人を含む3人が千里高校から参加しました。
・国籍や年齢の違う人とゆるく・深く話をできたのがとてもよかった
・日本の学校では慰安婦問題が簡単にしか触れられていない
・逆に朝鮮の人たちは拉致問題について知らされていない
・育った背景や年齢層によって韓国・朝鮮に対する見方が異なる
・これらについてさらに知り、知ったことを広く伝えていきたいと思った
とふたりは報告してくれました。
    最後の交流の時間では、まずKISでの教育の紹介と報告をしてくれた2年生5人の自己紹介を聞きました。そのあと、参加者3、4人の班の中に2年生5人が分かれて入って、小人数での質疑応答を行いました。
   
   
参加者は、
・多くの言語を知っているとそれだけ友達を作るツールが増える
・言語を学ぶには果敢にチェレンジすることが大切
・いくつも夢を持って良い、失敗は成功のもとと考えると、将来設計についてのあせりが消えた。
・夢はコロコロ変わってもよい。その時々でこれと思うものに打ち込んだら良い。
・チェレンジする中で自分の得意なこともわかる。
・「大胆さは才能であり、力であり、魔法である」という座右の銘が印象に残った。
・経験を伝えるのは、難しいが、楽しい。(2年生)
・韓国に興味を持ってくれているのが嬉しい。(2年生)
といった感想を述べていました。

4)今日のふりかえり
午前・午後それぞれのプログラムについて、新しく学んだこと、疑問に思ったことを付箋に書き出しグループごとにまとめました。
最後に全員でKISの正門で集合写真を撮りました。

参加生徒は、夢や挑戦についてたくさんの刺激をもらったように思われます。解散後には、何人もの参加者がKISの2年生と連絡先の交換をしていました。今後も両校の草の根の交流が広がって、両校の生徒の世界が広がることを期待しています。
                         


・会場の提供、生徒さんによる報告についてご協力をいただいたコリア国際学園の皆様ありがとうございました。




《引率教員から》
この研修は、国際文化科1年生4クラスの人に呼びかけて、20名強の人が参加してくれました。毎日クラス混成のグループになるよう座席指定しています。2日目のこの日は、緊張がほぐれてきたようで、「何か質問は?」の問いかけに、たくさん手が上がっていました。いいことですね。手を挙げて発言すると、講師との一対一の対話ができます。1対20で聞いているのとはまるで違う時間を体験できたと思います。