2019年7月13日土曜日

2019.7.9. 国際文化科1年生対象 SGH講演会を実施しました


本校では、国際文化科1年生を対象に国際問題に関する研究者を招いて講演会を行っています。今年は大阪大学国際公共政策研究科博士後期課程2年に在籍されている田中翔(たなか・しょう)さんに『難民の生活から考える“共に生きる”ということ』というテーマでお話しいただきました。
テーマは『難民の生活から考える”共に生きる”ということ』
講師の田中翔さん
講演会はまず、田中さんから千里生への質問でスタート。「○組の人!(挙手)」「海外へ行ったことがある人!(挙手)」「どこの国へ行きましたか?(マイクを向ける)」など、千里生と楽しく交流してくださいました。

そして田中さんの自己紹介・研究内容・大学院生の日常生活などを、具体的なエピソードとともにご紹介くださいました。
質問でアイスブレーク

会場の一番後ろまで話し掛けに来てくださった田中さん
いよいよ講演が本題へ。

田中さんはこの講演の目的が、
①日本に普通に暮らしている中で抱く「国際問題のストーリー」の先にあるリアルな状況を知ること
②学問的アプローチを通した、社会課題についての考察方法を知ること
であると説明されました。

その後、調査のためザンビアのメヘバ難民キャンプに滞在された時のご経験を、自ら撮影した多くの写真を使ってご紹介くださいました。現地の衣・食・住の特徴、医療の現状、人々の生き生きとした表情をとらえた写真とお話に、生徒たちは興味津々の様子でした。

ザンビアでの食事について

現地の陽気な若者たちについて

ザンビアの病院の様子
さらに難民についての説明が続きます。

難民や難民問題の定義、難民問題の原因、難民状態になったあとの問題などを、高校生にもわかりやすい表現で説明してくださいました。

特に、難民の受入拒否に関するEUの例、保護されたあとの難民の権利(特に移動、居住、労働の権利)が制限されていることを教えてくださいました。


次々に出た質問にもわかりやすく答えてくださり、このあとご紹介する「感想」に見られるように、難民問題とそれに対する多角的な見方について理解が進み、生徒たちが自分の課題として認識する機会となりました。

講師を務めてくださった田中翔さん、本当にありがとうございました。
質疑応答で司会生徒からマイクを受け取る

生徒からの質問に丁寧に答えてくださる田中さん

最後にアンケートもしっかり記入

以下、講演後のアンケートから、生徒の「受け止め」を紹介します。

Q1:今回の講演で、今後も覚えておきたいと思ったキーワードを列挙してください。
定義・概要・原因
「難民&国内避難民&庇護申請者←7000万人くらい」」
「難民は2590万人いる」
「国内避難民」
「武力紛争」
「政府からの弾圧」
「子ども兵士」
権利
「難民の権利」
「難民定住地政策」
「保護と制限がセットになっている」
「国益(国の利益)」
現地調査
「リアルな現状」
「意外と普通に生きてる(ザンビアの難民定住地の人々)」
「こういうところ(=難民定住地)で生きるのは大変だが、笑顔はある」
「難民定住地」・「難民定住地内での貧困の差」
「教育の技術を求めている」
多角的検討
「多角的な考え方」

「学問的アプローチ←いろいろな理論」

Q2:上記の内容で最も大切だと思うことはどれですか。その理由も書いてください。
多角的な考え方をもつこと。どんな要因があってその問題が起こっているのかを、様々な立場に立って考えることで問題の解決に繋げていく、というのはとても難しいと思いますが、重要なことだと強く感じました。
 国益によって、EUはシリアなどからの難民を拒否している。国民がどれだけ受け入れる体制ができていても、国益や国のトップが拒否したら受け入れないことができる。私たちの意見だけではどうにもならないことがあることが知れた。
 難民の権利というものをはじめて知った。それが正しく守られ、整えられたら難民の生活がよりよいものになると思った。
 近頃、難民の受け入れを拒否する国が増えている。しかし難民は増加している。同じ人間であるため、別の視点で考え、我々の行動も改めるべきだと思う。
 テレビやインターネットで知るアフリカや難民の勝手なイメージで支援するのではなく、リアルな現況を知って、何を必要としているのかをちゃんと理解して接することが大事だと思った。
 いろいろな視点から物事を考え、難民に対する取り組みを積極的に考えていくことだと思います。国益を優先してしまい、難民を受け入れようとしない国がたくさんありますが、難民の方々も同じ人間で、できることもたくさんあると思うからです。そして、受け入れた後、共生についても考えていくことが大切だと思います。

 いろいろな視点から物事を見る。様々な考え方の人がいて意見が分かれてしまうこともあるが、良く捉えるとたくさんの考え方がある。写真や資料を通しただけでは伝わらないことがある。文字で状況判断し、現地に行って自分の目で確かめる。

Q3:あなたが生きていく上で「勉強になった」と思うことを書いてください。
 いろんな視点をもつ必要がある。
 現地へ行って現実を知る重要性。
 とにかく考え続けることが大切だということ。
 要因はどんなものがあるのか。何が解決なのか。誰のための解決か。
 本当の共生というものは、保護して終わりではなく、その国の中で快適に生活していってもらえることだと思った。また、私たちの固定概念を変えていく必要があると思った。
 写真を見ると笑顔にあふれていて、生活がたとえ貧しくとも、心が豊かなんだなと思った。そういう人々の生活水準がもっと上がればいいと思った。
 自分が毎日学校に行けて、3食しっかり食べられているのは普通ではない=ありがたみを自覚すること。
 難民の人たちは暗くはなく明るい性格(の人もいる)=偏見を持つことはいけない。
 物事を立体的に考え、いろんな視点で物事を見る考え方。これはどんな問題の解決にも役立つと思う。
 なぜ国が難民を受け入れないのか受け入れた国での難民の人権など、色々なことを知りました。こういった社会問題を解決するには、私たちの世代がこの問題に関心をもつことが大事だと分かりました。

 価値観を変えていくべきなのは周囲の人たちだということ。1つの物事に対していろいろな視点から見ることで新しい考え方が生まれるということ。国際的な問題について学ぶことができ、少しでも役に立ちたいと思えた。ボランティアなどの機会があれば、ぜひ参加してみたい。