2023年2月13日月曜日

2023.2.3-4. 第18回千里フェスタにおいて87の「探究」発表を行いました。

 2023年2月2日〜4日 第18回千里フェスタを開催しました。2日目と3日目に行なった成果発表のうち「探究」の発表について紹介します。

>千里フェスタでの全ての発表のタイトルを、こちらからご覧いただけます。

国際文化科2年生の課題研究「探究」では、全員が社会課題解決をめざす研究を行います。大きく変化する社会の中で活躍できる力をつけるためです。

4月から、問題の把握・先行研究や先行事例の調査・実情を知るための調査や取材・解決策の立案・案に対して専門家や当事者から意見をもらう、といった活動を行ってきました。その成果を発表するのが千里フェスタです。今年度は8つの会場に分かれ87の研究について報告が行われました。

調査・発表・振り返りを繰り返すことで研究が進展します。4月は関心を持ったテーマの交流、6,7月は調査計画書の作成と検討、9月は調査結果を報告する講座内発表会、10月は3年生にも意見をもらう中間発表会、11月は大阪大学の大学院生による個別論文指導、1月は2回目の講座内発表会と大学院生による論文指導がありました。これらの機会を経て研究は進展し、中間発表会後の研究の深まりました。このことを外部助言者の先生方にも評価していただきました。

今回代表発表に対してコメントをしていただいたのは、大阪大学大学院 人間科学研究科附属未来共創センター 特任教授 榎井縁様(下の写真・右端)とIDEC株式会社 CSR室長 川内理絵様(上の写真・左端)です。大学・企業の第一線で働いていらっしゃるお二人からは、研究の意義を評価していただいたり、関連する問題や新たな見方を教えていただいたり、実際の企業での取り組みを紹介していただいたりしました。生徒の振り返りの次のような言葉に、生徒の受け止めがあらわれています。

コメンテーターの方のコメントから、学ぶことがたくさんあった。自分の中だけでは絶対出てこないような角度からの考えが聞けて、とても良い経験になった。

コメンテーターの方が紹介されていた「ルッキズム」は私も知らなかったので、学ぶことができました。

他の会場では、参観に来ていただいた保護者の方からたくさんの質問やコメントを出していただいたと聞いています。 

今回、見学者はchromebookを会場に持参してフィードバックをその場で入力することにしていました。

そのため、発表中に自分の知らないことがあるとすぐに検索して詳細を確かめることができました。

これまでにはなかった新しい光景です。



このあと、一人研究は4000字、共同研究は7000字にまとめ、英文の要約を加えた論文を提出します。


■Student Reporterによる報告
1年生の委員による探究の発表についてのレポート5つを紹介します。2年生の発表が1年生にはどう映ったのでしょう。

発表タイトル「虐待加害者に必要な支援」(国際文化科)
 【発表の内容】
・日本には虐待されている子が増えていてそのほとんどが心理的虐待や身体的虐待
(心理的虐待とは大声で罵ったり、兄弟間で差別したりすること。身体的虐待は暴力などにより身体に傷を負わせたり生命に危険を及ぼしたりするようなこと。)
・虐待は連鎖する。
(幼い頃に受けていた虐待を自分の子どもにも同じようにしてしまうこと。)
・虐待は加害者だけが悪いのではなく、周りの行動で防げることもある。
・悩んでいる親の相談に乗る
・虐待かもと思うようなことがあったら通報する
(自信がなかったり通報していいのか迷ったりする時は、匿名で相談できるような所もある。)
・見て見ぬふりをしない
・親のSOSに気づいてあげる
           
 【感想】
最近虐待のニュースとかもよく見るし、もしかしたら身近なところにいるかも知れないから自分から何か行動できる人になることが大切だと思います。
虐待の話を聞くと、ほとんどの人が加害者が悪いと思うだろうけど、私はこの発表を聞いて、加害者の行動だけを批判するのではなく周りにいる私達の行動も見直す必要があると気づきました。
もし自分が虐待を見たときや気づいたときどのように行動すればいいのかも学ぶことができたので良かったです。

 

② 発表タイトル「使用済み使い捨てカイロを利用して、汚れた水をきれいにする方法とは」

 【発表の内容】

 水質汚染について調べるために、千里高校のビオトープの汚れを使用後の使い捨てカイロを使って浄化する実験を行った。GoGreenGroupという会社と直接やり取りを行い、カイロを入れたとき、入れなかったときを対照実験として行った。また、GoGreenGroupが今現在どのような実験や取り組みを行っているかについても調査した。それを踏まえて、今自分たちにできる水質汚濁を未然に防ぐ方法についても発信していた。

 【感想】
 中間発表の時に聞いた発表で、その後の経過状況や実験結果が気になったので見学に行きました。実験結果を知れて良かったのと同時に、直接やりとりをしていた会社がどのように実験や取り組みをしているのかを新たに知れてよかったです。

 

③発表タイトル「服の交換会を通じて衣服ロス問題への意識を高めるには」

 【発表の内容】

今現在衣服ロス問題はあまり対策されておらず、しかし衣服の作成には大量の水が必要であり、また大量の二酸化炭素が排出され、廃棄にも二酸化炭素は排出されることから、対策が必要です。

服を交換することで廃棄を減らせるのではないかという考えから、0円服の交換会に参加し、交換会を実施している会社の社長へインタビューを実施したところ、女性が大半で、中高生の参加が少なく、また、会場では高校生が着るような服が少なかったそうです。

そこで千里高校で服の交換会を開催することで、費用がかからないことに加え、あまり興味がない高校生の興味を引くことができると考え、交換会を開催したところ、廃棄される予定だった服を削減できたと言います。しかし、参加者が少なく、アンケートを取ったところ、参加者は衣服ロスに興味を持ったが、不参加者は興味がない、時間がない、などと回答していました。

これからの課題として、参加者が少ないことから、別のアプローチの方法を考えていくそうです。

 【感想】

最近の若い人ほど流行に乗り、まだ着られる服を捨てる傾向にあると思うので、高校生を対象に服の交換会を実施していたことがとても良い考えだと思いました。私も実際に服の交換会に参加したのですが、外部で実施している服の交換会よりも高校生が着るような服が比較的多かったと思います。あまり参加者がいなかったとのことなので、ポスターなどの宣伝によってもっと興味を持ってくれたらいいなと思いました。

 

④ 発表タイトル「ペットと共生するために 〜生物多様性な社会を作るためには〜」

 【発表の内容】

 犬猫の殺処分の現状は減少傾向にあるものの、年に犬は4千匹、猫は2万4千匹が殺処分されている。猫のほうが多い理由は繁殖力が大きい、野良猫と飼い猫の混同等がある。スペインやドイツでは殺処分はゼロ、店頭販売もない。アニマルトラスト保護団体の取材の結果では、ペットショップが悪いのではなく、責任感がない飼い主が悪い。大阪府では犬の登録制度がある。しかし、猫のはないため、猫の殺処分を減らす探究をしていきたい。
 【感想】
 殺処分ってとても身勝手なものだなと思いました。人間の責任感のなさが引き起こしているものなので早く解決してほしいです。またスペインやドイツは殺処分がないときいて、ただ日本が管理しきれていないのかと少しがっかりしました。動物の命を預かってペットにすることの重みを感じることが大切だと思いました。千里フェスタを通して知らなきゃいけないのに知らないことをしれてよかったです。


⑤ 発表タイトル「ヤングケアラーが生きやすい環境をつくるためには」

 【発表の内容】

・ヤングケアラーとは?

・ヤングケアラーをサポートするために出来ることとは?

 【感想】

ヤングケアラーという言葉は近年聞くようになったが、ヤングケアラーの人はどのようなことをして、何に困っているのかは知らなかったので、学ぶことができた。

特に、ヤングケアラーは小中学生も多いという点に驚いた。ヤングケアラーの人が必要としている支援で最も多かった「勉強のサポートが欲しい」という結果に、勉強もできないほど小中学生がしんどい思いをしなければならないというのが悲しいと思った。

また、ヤングケアラーの人は自分がヤングケアラーであるという自覚がないことが多いというのを聞き、ヤングケアラーという言葉が日本で浸透していないことが原因ではないかと思った。ヤングケアラーの人の支援は自分から相談しないと受けられない現状を変えたいという発表者の方の思いに私も共感した。


2023.2.2. 国際シンポジウムー今年度は「自然災害と防災」をテーマに開催

 学習成果発表会「千里フェスタ」の初日である2月2日木曜日に国際シンポジウムを開催しました。

例年、文系理系双方に関わる社会課題をテーマにしています。今年度設定したテーマは「自然災害と防災」です。生徒・留学生による4つの英語での発表と質疑応答のあと、気象災害の研究者から最新の知見を紹介していただきました。

  • 総合科学科2年生「科学探究」の研究発表
    • To prevent sediment disasters (土砂災害を防ぐには)
    • 金尾優希さん、木村拓海さん、松山瑞希さん、本間仁さん
  • 国際文化科2年生「探究」の研究発表
    •  How can we ease children’s stress during evacuation? Let’s spread happiness together through play! (避難所にいる子どもたちのストレスを緩和するには ~私たちから遊びの輪を広げよう~)
    • 宮下莉央さん、木下和花さん

  • タイからの留学生による報告 
    • Natural Disasters in Thailand(タイにおける自然災害)
    • Ponrakun Tritsanawasuntra さん
  • ドイツからの留学生による報告 
    • Natural Disasters in Germany(ドイツにおける自然災害)
    • Marie Boger さん
  • 京都大学防災研究所 竹見哲也教授
    • 「自然災害の世界的な状況と防災研究の多様なアプロ―チ」
                                                                            <この講演は、三菱みらい育成財団からの助成を受けて行いました。>

生徒の「振り返りアンケート」から

(A)双方の学科の発表を聞き、プラスになることはありましたか?それはどんな点ですか?
  • 災害に対して科学科はまず被害を出さないということ、文化科は起きたあとの対応で様々な面から災害に対してアプローチする必要性について学びました。(総合科学科2年)
  • 災害について先行調査からフィールドワークなどを通して行う国際文化と、自分たちで実験を行い検証する総合科学という2つの側面と海外事例を紹介してくれるマリーさん、フィールさんの二人も相まって全体が多角的に捉えられた(国際文化科2年)
  • 両学科の特徴を生かして災害に向けて研究したところが興味深いと思いました。総合科学学科の先輩方は、災害を止める方に研究を進めてていて、私の想像を超えた提案をしていて、なるほどと思いました。国際文化学科の先輩方は、災害の被害者の支援に向けての研究を進めていて、将来自分も実践してみようと思うことを思えた発表でした。(総合科学科1年)
  • 国際文化科では実験を行うことがないので、その過程を知ることができたこと。(国際文化科2年)
  • 心やストレスといった数字で表わせないもののケアも大事だということ(総合科学科1年)
  • 災害を防ぐためには論理的な数学的な考えが不可欠であることと同時にそれをより多くの人に共有するために英語を用いて話すということはとても有効なことだと思いました。(国際文化科1年)
  • 自然災害に対する様々な視点からの研究にたくさん触れることができた。一つの物事に対する見方について知ることができた。(総合科学科1年)
  • 国際文化科と総合科学科の発想を組み合わせることが大事だということ。(総合科学科1年)
  • 科学科と文化科では探究のテーマがそもそも別物だと思っていたけれど防災について考えると別の視点からいろんことを考えられてすごく面白いなと思いました。(国際文化科1年)
  • 文化科、科学科それぞれの視点の発表にも共通点、相違点があり、将来何かの問題に取り組むときに様々な視点で考える必要があるとわかったこと(総合科学科2年)
  • 科学科の地すべりの実験のトライ・アンド・エラーでは国際科にはあまりない考え方を知ることができた。(国際文化科2年)
  • 探究の内容は科学探究では行わない内容だから知らないことも多く理解が深まった上に興味が湧いた(総合科学科2年)
  • 国際科の実際に行動を起こしインタビューや体験をするというのが科学科とは異なる点でこういう活動によって探究を深めているのかと感じた。科学科でも実際に自分たちが研究するときに、そのテーマに精通している大学の方にお話を聞き知見を深められたらいいと思った。(総合科学科2年)
(B)「タイ・ドイツにおける自然災害」の発表は興味深くきけましたか? それはどんな点ですか?
  • 地震を恐れる日本と違い、特に水害の影響が顕著な他国の例を知ることができ、とても興味深かった。各国の対策なども日本と似ていたり違ったりしているため、より深まった。(国際文化科2年)
  • タイやドイツでは、環境や立地の違いから日本では経験できないような災害があることを知ると同時に、日本の気候の特徴を改めて感じた(国際文化科1年)
  • タイの自然災害についての話では、日本のように災害の多い国としての苦労や対策を聞いて、興味深いと思いました。ドイツの自然災害についての話では、自然災害があまり起こらない国でも地球温暖化の影響によってもっと起こることがあるので、これから万全の対策をすべきだと実感しました。(国際文化科1年)
  • タイでは台風や洪水の問題を学校教育の一環として取り入れていることを知って、国によって災害に対する取り組み方や意識が異なるのだと気付かされました。(国際文化科1年)
  • Marieさんの発表の仕方がとても美しく、気候変動が災害に影響されているという主張を聴衆に訴えているように感じました。(国際文化科1年)
  • 英語の発音などももちろん勉強になったけど、この2つの発表の発表者はとても堂々と話していたので、スピーチの仕方についてためになることがたくさんあって、関心をもって聴くことができました。(総合科学科1年) 
  • タイで起こっている自然災害は、洪水と台風でした。とくに印象に残ったのは、洪水が起こった際には、泳げるくらいまでの水の量が道路にあるということでした。洪水と言っても、道路に少し水が張っているだけかと思っていたので、びっくりしました。ドイツでは、もともと自然災害等がなかった国なのに、地球温暖化が起こっているせいで、年々自然災害が増えているということにびっくりしました。特に、嵐によって看板等や家が崩れ落ちているのを見て、とても危険だなと思いました。(国際文化科1年) 
  • 日本だけでなく、世界各国自然災害の影響を何かしら受けることを発表を直接聞くことで実感し、地球温暖化防止に対して再度注目するきっかけになったこと。(総合科学科1年)
(C)国による多様性あるいは共通点を意識する気持ちが強まりましたか?それはどんな点ですか?
  • それぞれの国特有の課題を知ることができて、以前よりその国に興味を持てるようになった。(総合科学科1年)
  • 日本以外の他の国の災害情報をあまり気にしたことがなかったのでいい経験だった(総合科学科2年)
  • 海外の自然災害についてはほとんど知らなかったので日本以外にも被害が大きい国があることを知った(総合科学科2年)

(D)英語での発表と質疑応答を経験し、英語への意識は変わりましたか??それはどんな点ですか?
  • 英語がわかれば世界の人と様々な意見交換できるということがわかった(国際文化科1年)
  • タイドイツの留学生の話を聞けたことが、よかった。英語を使えばタイやドイツの人の伝えたいこともわかるのだなと感心した。(国際文化科1年)
  • 英語を勉強することで国と国との間での問題共有や解決策の共同施行が行えると知った。(国際文化科1年)
  • 発音や文法より、心にある言葉を相手に稚拙でも伝え、意見交換することが大切だと感じた。(国際文化科1年)
  • 国際性を高めるには英語が必須で自分も頑張らなければならないものだと感じた(総合科学科2年)
  • ドイツとタイはどちらも公用語が英語ではないのにも関わらず共通の英語を使ってのコミュニケーションを取ることができるのはすごいことだと思った。もっと、使えるようにしたいと思った。(総合科学科1年)
  • 自分自身も英語での発表などで英語力の向上をしてみたいと思った。(総合科学科1年)
  • 国ごとに発音の癖があったり、表現の仕方に少し違いがあるということを体感しました。ただ原稿を読むのではなく、英語を用いて相手に伝えるということがされていて、シンプルにすごいなと思いました。(国際文化科1年)
  • すべてのやり取りを英語で行うことによって、理解しようと聞き入るのでとてもいいなと思いました。私も、伝えたいことを英語で伝えられるようにしようと思いました。(国際文化科1年)
  • 英語で質疑応答しているのを見て、国際交流とかはこんな感じなんだなとわかった。(総合科学科1年)
  • 自分と同じくらいの年齢の人でもスラスラ英語を喋っていてすごいと思ったし、来年は自分もこれくらい英語を喋れるようになりたいと思った。(総合科学科1年)
  • 千里高校に入って授業では当たり前に英語を使いますが、授業外で英語を使うのは初体験ではないかもしれないけど一番国際文化科らしいことだと思いました。私も来年英語で発表したり、ディベートしたり国際文化科が設置されている高校に入学したからには英語をもっと身近に使用して行きたいなと思いました。(国際文化科1年)
  • 英語の要約から内容を理解しようとし、英語に触れようとする意識が高まった。(総合科学科2年)
  • 英語を伸ばす方法は経験が大事だと思うので、来年は壇上で発表したいと思った。(総合科学科1年) 
  • 留学生の二人は、発表しているときに身振り手振りを使ったりして引き込まれるものが多かったように感じる。 英語で話すときは、語句と語句のつなぎ目をいかに不自然に区切らないかでうまくなるなと思った。(国際文化科2年)
  • 日本語訛り、タイ語訛り、ドイツ語訛りの英語に触れて、どれも聞き苦しいものではなく、個性的で誇るべきものだと感じた。総合科学科1年)