2016年7月7日木曜日

2016.7.7.国際文化科1年生SGH講演会
「国連職員になりたい私が高校生の時に知っておきたかった4つのこと」を開催しました。

講師は、板倉美聡(いたくら みさと)さん。


「世界で一番困っている人のために働く」ために、大阪大学法学部国際公共政策学科在学中から世界各地を訪問、また、国内外で研究も発信もしてこられた。


『国連職員になりたい私が、高校生の時に知っておきたかった4つのこと』をスピード感あふれ、インタラクティブな講演で話して下さった。そのメッセージは強烈に生徒の心に響いた。


 以下、①年表、②高校生の時に知っておきたかった4つのこと、③生徒の感想を紹介する。


①板倉さん"年表"

2010年:UNHCRの緒方貞子さんの「私の仕事」という本に出会う。「世界には家がない人がいるのか!」という衝撃を受ける。
2012年4月:大阪大学法学部国際公共政策学科入学。
2012年9月:同学科で出会った先輩の「インド行こうぜ!」の一言で、アジア最大級のスラム・ワダラスラムにダンスしにいくことに。そこで見た子どもたちの笑顔に、「貧困=不幸じゃない」ということを確信する。「誰が世界で一番困っている人なのか。」その問いの答えを探す、大学四年間が始まる。

2013年3月:ベトナムで枯葉剤の影響に苦しむ子どもたちの住む施設を訪れる。紛争後社会に興味を持ち始める。
2013年4月:国共の友人の思いに共鳴して、国際食育団体「おむすび」を設立。
2013年9月:1ヶ月の英国語学留学にて、自分の至らなさを知る。それでもなんとか学内選考に合格して交換留学への切符を勝ち取る。
2013年12 月:三度目の正直。「おむすび」の大学生協との交渉が成功し、Table For Twoの大阪大学生協食堂への試験導入を決める。
2014年3月:アフリカ研修旅行を企画・実行。実行直前にケニアでテロが起こった関係でメンバーが5人から2人に減ったにもかかわらず決行に踏み切った。ウガンダで元子ども兵の社会復帰施設を訪問し、ルワンダでは支援先の学校訪問や、ジェノサイドサバイバーから話をきくなどの活動を行った。
2014年8月:第66回日米学生会議日本側代表団として渡米。アメリカの4都市を周り、歴史教育とその社会的影響について議論、発表を行った。
2014年9月:学生会議終了翌日から留学開始。国際関係論を学ぶ傍ら、難民支援のNGOでボランティアと、上院議員オフィスでのインターンシップも経験する。日本の学生向けメディアサイトにてライターとして活動を始める。
2015年1月:アメリカで出会ったパキスタン人と意気投合。中東政治を勉強しイスラムに興味を持ったこともあって、パキスタンを訪問し、ついでにイランにも寄る。イスラム教への興味が加速する。
2015年4月:国際NGOプランジャパンの意思決定に参画するYouth Advisory Panelに就任。インドネシア部のリーダーを務める。
2015年5月:帰国。元外務省事務次官の主催する薮中塾に入塾。イスラム勉強会を担当し、ますます中東政治に興味を持つことに。
2015年9月:ヨルダンにてシリア難民支援のNGOを訪問。イスラエル、パレスチナにも弾丸訪問する。
2016年3月:Youth Advisory Panelとしてインドネシアを訪問。現地でインタビューを行い、自分達の提案するシステム改革の実行可能性について検証する。
2016年9月:英国Durham University修士課程へ留学開始
2017年10月:Durham大学卒業。国連でインターンを経験
2018年4月:ついに社会人になる。
2021年:人道支援系のNGOに転職。人道支援の最前線で経験を積む。
2023年:JPO試験合格。晴れて国連職員となる。
2025年:JPO終了。UNHCRに自力で再就職
2027年:PKOミッションに転職。世界で一番困っている人のために働く。

②高校生の時に知っておきたかった4つのこと

  • 本気で成し遂げたいことは言いふらせ!
  • 自分の頭で考えて自分の意見をもつクセをつける!
  • 想像できるレベルのことは大抵何でもできる!
  • 一つでも多く"当たり前"が"当たり前"じゃなくなる瞬間瞬間に出会え!
 難民の話、イスラム教の話を中心に、この4つのアドバイスをわかりやすく話してくださった。

 ③生徒の感想から

❝本当に叶えたいことは人に言いふらす❞ 私は講演を聞くまでは、叶わなかったら恥ずかしいから誰にも言わないでおこうと思っていましたが、この講演を聞いて、言いふらしたほうがいいことがたくさんあることを知りました。情報が集まったり、誰かが協力してくれたりして、夢が叶いやすくなるということを聞いて、とても納得しました。


❝常識を常識じゃないと思う瞬間を作れ❞ 私はずっと当たり前のことを当たり前にできる人間になろうと思っていました。当たり前な事をするのは当然のことだと思っていたし、それに対して何の疑問も抱きませんでした。しかし、今回の話を聞いて、当たり前は自分にとっての当たり前でしかないのだと知り、考えが変わりました。もちろん今まで通り自分がやらないといけないと思うことは当たり前にやりたいですが、相手がどう考えているのかを理解し、受け入れることが必要だと感じました。

❝マララみたいな子はいっぱいいる。❞ マララさんは現地の人たちからするとそれほど特別なわけではない、という事を聞いた時にはとても驚きました。私たちが見たり聞いたりしているニュースはとても一面的であることを感じました。

❝世界で1番困っている人たちのために働く❞ 僕の将来は海外で働いてみたいなぁと思ってきたいたけど、この話を聞いて、もっと海外のことに興味がわきました。板倉さんはすごい行動力を持っているなととてもときました。世界で1番困っている人たちのために働くなんて簡単に言えることじゃないのに言い切っていて、しかも実現させようとしているのはすごく勇気があってかっこいいなと思いました。

2016年7月5日火曜日

2016.7.5. SGH教員研修の内容を紹介します。

「グローバル化した世界における
人権・労働・環境の課題」


に向き合える
市民育成のための教育


講師に、白石理さん(一般財団法人アジア・太平洋人権情報センター会長、元国際連合人権高等弁務官事務所人権担当官)をお迎えして教員研修を行いました。


当日用意していただいたプレゼンテーションスライド資料の内容を本校の担当者が再構成したものを紹介します。


第1部では「グローバル化と国際人権」について、
第2部では「グローバル市民育成のための教育の目標とそのために必要となる具体的な能力」について、
述べられています。

結論部分では、
「将来仕事として、新しい課題に対して、事実を分析し、論理的に、他者と協働して、創造的な解決策を生み出していけるようになる能力」を、「国際人権の実現という普遍的価値のために発揮することを自らの幸せと考える」という人間像が示されています。

このような人物が育つための教育を、各教科の授業・課題研究・HR・課外活動を通して実現していくのが、われわれ教員の仕事と言えます。

----------------------------------------------------------------------------------

(1)グローバル化と国際人権

1        「グローバル(GLOBAL)」←GLOBE
一つの国の領域、地域を超える。
国、文化、人種、宗教などのちがいを超える
→差別、偏見の除去 という方向性
1.1       「グローバル」と「国際」
同じではない
Global:国の垣根を越えて
International(国際)国(Nation State)の枠組み前提
1.2       グローバル化は世界の流れ
人、物、富(通貨など)の国境を越えた移動
企業活動が国境を越えておこなわれる。
外国に出ていく人材/外国から入ってくる人材

2        グローバル課題
·    一国の枠組みでは、対処し解決できない問題 →グローバルな取り組みが必要となる。
·    「グローバル課題」としての平和、安全保障、移民・難民、貧困、食糧問題、衛生、自然環境保護、開発、資源エネルギー問題など

3        プラスのグローバル化もある
·    多様性の受容と独自性の尊重 −ダイバーシティ。
·    普遍的価値の承認と支持 −平和、人権、社会正義、公平、持続可能性

4        国際連合を例として
「グローバル」を考える グローバルな目標を掲げる国際連合の働きと限界
4.1       国際連合が描く「国際社会」とは?
紛争や主張の相違を武力、暴力で決着しようとしない、
権力をもつものが、抑圧、弾圧をしない、
公平、公正(社会正義)が保証された社会
4.2       平和、正義、人権尊重
4.3       世界の多様性と国際連合 世界のほとんどの国が加盟する国際組織→
国と国の間の平等と国際協力 ⇔ 格差(経済、社会、政治、軍事)
すべての人の尊厳と人権の尊重 ⇔ 差別

5        国連で初めてグローバル化した人権
5.1       普遍的価値としての人権
人権の国際基準(グローバル基準でもある)は、国際連合に始まる1945年)
それまでは、一面的、部分的(憲章前文、第13項、第55条)

世界人権宣言 (1948年)「人権の普遍的宣言」1
「すべての人間は、生まれながらにして自由であり、かつ、尊厳と権利とについて平等である。人間は、理性と良心とを授けられており、互いに同胞の精神を持って行動しなければならない。」
人の尊厳人は、一人一人が、人であるがゆえに「かけがえのない」,「尊い」,「大切な」もの。
人権の普遍性、平等性:人権は、「だれでも」、「どこでも」、「いつでも」、「同じように」

5.2       世界人権宣言は、
人権の国際基準の土台:
·    国を越えて、人種、性別、信条、出自、身分などの別なく、だれにも、平等に保障される人権という原則を定着させた。
·    後に続く国際人権条約、宣言文書の指針となった。

6        国連の人権分野の新たな展開
のひとつの例
グローバル化した経済、企業活動の現状国際人権基準に沿った原則の採択
→「ビジネスと人権に関する指導原則」国連「保護、尊重及び救済」枠組み (2011)
·    国家には人権を保護する義務がある。
·    企業には人権を尊重する責任がある。
·    人権が侵害された場合には、救済を受けることができる。

世界の同様な動き
·    グローバル・コンパクト(20007月)人権、労働、環境、腐敗防止の分野における10原則
·    OECD多国籍企業ガイドライン(1976年、2000年と20115月改訂)人権に関する章を追加
·    ISO26000 (201011):社会的責任を包括的に扱う。

7        国際連合の限界
主権国家が集まって作った国際組織「国益」によって行動する加盟国
·    深刻な問題、状況に対する対処で合意が困難。「議論の場」に終わることもある。
·    強制力・執行力を持たないことが多い。

8        グローバルな理念を実現する
ための国連機関を求めて設置されたもの:
高等弁務官(難民、人権)国連開発計画(UNDP国連児童基金(UNICEF国連環境計画(UNEP国連平和維持軍(???)国連専門機関(ILOWHOFAO、など)


()グローバル市民育成のための教育

9        グローバル市民教育:
20129月国連事務総長による「グローバル教育第一イニシアティブ」で挙げられた3重点課題の一つ
9.1       グローバル市民教育の目標
·  地域社会でそしてグローバルな規模で、
·  より公平で公正な社会、平和、寛容、安全で持続可能な社会を実現するために
·  積極的に貢献できる人を育てることである。
9.2       グローバル市民教育の「グローバル」:地球に住むすべての人と社会を視野に考える。
·  普遍的な価値」とは、「差異を越えて、国の壁を越えて、互いに協力し合うこと、世界中の市民が共に生きること」競争に勝ち抜くことや特定の国の利益を優先すること
9.3       グローバル市民とは
①グローバル課題と国際社会情勢の知識と理解 ②普遍的価値の理解と尊重、コミットメント思考力、分析力、問題解決能力、決断力の体得 ④言語の習熟
⑤異文化を超えたコミュニケーション力 ⑥行動力
9.4       グローバル教育と日本の学校教育
生徒の自主性、意見表明、創造性、コミュニケ-ション力
グローバル市民教育−普遍的価値を基礎とする世界基準の知育

10     グローバルな視点から考え行動するために、あなたはどこから世界を見ていますか?
10.1    グローバルに貢献できる
手段、条件を備える
·    理解、交流のためにー「ことば」を学び、みがく。
·    自分のアイデンティティ、文化的精神的ルーツを確認する。
·    働くためにー使える知識、技能、経験、資格を獲得する。
10.2    知識
·    普遍的価値の理解と尊重。
·    グローバル社会に生きる市民としての教養(文化、歴史、芸術、思想・哲学、文学、社会・経済・政治の仕組みなど)の体得。
·    科学技術や知識の獲得。
10.3    普遍的価値とは?              平和人権社会正義公平持続可能性
10.4    必要な能力は→ 思考力分析力問題解決能力決断力
10.5    コミュニケーション力→ 言葉の習熟だけでなく異文化、多様な背景を持つ人との交流、対話、相互理解、協力・協働ができる力
10.6 行動力→ Think globally. Act locally.
グローバルな視点(普遍的価値観)から理解する。考える。判断する。行動をおこす。
例として:環境問題、地球資源の保全
2015年、国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)で出されたグローバル課題 
地域の日常生活で自然環境保護に貢献し、資源保護の活動に関わること は密接に関連する。

11     おわりに 
11.1    グローバル化における普遍的価値 の意義
グローバル社会にふさわしい人を育てるための グローバル市民教育
グローバル社会にふさわしい教育を行うよう、学校教育の変革に期待 SGH/GLHS
11.2    グローバル市民教育が目指す目標
Ø   普遍的価値(平和、人権、社会正義、公平、持続可能性)を共有する人たちが、
Ø   一人ひとりのアイデンティティを維持し、それぞれの能力を生かしながら、
Ø   地域レベル、国レベルそして国際レベルで、
Ø   自由な独立した個人として、コミュニティに貢献することができる。
Ø   平和で、人が大切にされ、公平・公正が担保される、持続可能な社会づくり
11.3    グローバル教育は生徒のためになるのか?
「生徒のため」とは? それぞれの人生の目標によって、「ためになるか」どうかが決まる。
グローバル教育は、
            グローバルな課題を意識し、それに取り組みながら、
            よりよい社会づくりに貢献することで
            幸せに生きることができる人を育てることを  目指す。
この目標が、人生の目標として共有されるのなら、グローバル教育は生徒の「ためになる」。