2018年4月21日、22日に大阪大学大学院国際公共政策研究科 第4回国際公共コンファレンスが行われました。本校からは、3年生の二人が参加させていただき、『探究』の授業で行なった研究を発表しました。二人の発表タイトルは、『飢餓で苦しむ人をなくすために』(森井さん)と『どうすればフェアトレードの商品を普及させることができるか』(村木さん)でした。
そして、大阪大学国際公共政策研究科の先生がた、そして大学院生・学部生の皆様から指導をいただいて、多くのことを学ばせていただいたことに感謝しております。
我々指導する者は、校外での発表を、自分たちの指導に対しての通知簿のようなものでもあると考えています。参加してくれた二人が書いてくれた「反省点」を今後の留意点として活かし、指導を充実させていきたいと思っています。
二人に、参加しての感想と後輩へのメッセージを書いてもらいました。紹介します。
■森井さん:
今回この阪大のコンファレンスに参加したきっかけは、私が1年生の時に部活の1つ上の先輩が、関西学院大学で探究のポスター発表を行っていたことです。自分が探究したことを発表できる場があるということを知り、自分自身が2年生に上がって探究を行い、このコンファレンスの紹介を受け、私も挑戦してみようかなと思いました。
今、発表を終えて率直に思うことは、自分の準備不足と力不足です。私は飢餓を大きなテーマとして探究していく中で、貿易と経済に因果関係はあるのか、またあるならどのような因果関係であるのか、を示すことを1番大きな課題としていました。千里フェスタでの探究最終発表では、貿易と経済の因果関係を示す論文を提示することができ、発表を見てくださった先生がたや添削してくださった大学院生の方の納得を得ることが出来ました。しかし、今回のコンファレンスでは、審査員の方々に、私の示したハイチの経済に関するデータのバックグラウンドについて指摘され、私の論理と全く逆のことを示すデータであるというコメントをいただきました。正直、私としては得られた情報に絶対的な信頼を置いてしまっていて、その情報のバックグラウンドを見るということをしていませんでした。今回、コンファレンスに参加して得られた最大の教訓が、この「情報のバックグラウンドを見る」ということ、「情報を疑う」ということでした。
あと、私の発表にも、他の方たちの発表に対しても指摘されていたことに、情報の使い方、その情報が本当に言いたいことが示せるデータであるのか、ということがありました。このことについても私はその部分の詰めが甘く、自分の力不足を痛感しました。発表が終わったあとも、審査員の方々が色々とお話してくださいました。それは、「この社会の中で力を持つ国家や組織はそもそも善であるとは限らない」ということでした。そして、国家や組織にとって都合のいい部分だけを拡大した情報が出回っているため、このことを示す情報を知るのは難しい、ということでした。ヴァージル・ホーキンス先生が、「現代がそのような環境となっていることが1番の問題だ」と仰ってくださったことが、今回のコンファレンスで最も印象的なことでした。
2日目の全体発表会では4組が発表を行い、質疑応答でも審査員の方々からの厳しい質問が飛んでいました。それでも発表者の方々は、戸惑うことなく、自分の考えを応答として述べていました。それだけ熱心に研究されてきたんだなと感じ、また同時に自分の準備不足も痛感しました。正直なところ、厳しいご指摘をいただいて、心が少し折れそうになったことも事実ですが、それよりも得たものは大きく、今はただチャレンジしてみて良かったなと感じています。
■村木さん:
《自分の研究について》
私はフェアトレードがあまり知られていない日本でどうすれば普及させることができるのかについて探究していました。具体的には、フェアトレードに関心が高いと言われているイギリスやドイツとの比較を行いました。また、企業訪問研修の機会を利用して、フェアトレード商品を多く取り扱うヒロコーヒーの社長からお話を伺い、事例研究をおこないました。そして研究のまとめとして、いま私たちに何ができるかということを考え、学園祭などでフェアトレードに関する情報を伝えつつ、商品を販売することを提案しました。これにより自分の周りの人を巻き込み、若い世代から認知度を上げて行くことができると考えました。他にも、ヒロコーヒーのようなフェアトレード商品を取り扱う企業が増えれば、消費量を増やすことができ、フェアトレード商品を普及させることができると考えました。
《勉強になったこと》
大学の先生や大学院生の方から、発表に対して直接コメントやアドバイスをいただくのは初めてで本当に貴重な体験ができたと思いました。また、他の生徒のプレゼンを見ることで、いろいろな考え方を知ることができました。他の生徒に対してなされたアドバイスからも、そんな見方があるのか、今後このようにスライドを作ったらいいのか、どういう流れで発表を組み立てるべきなのか、などたくさんのことを学ぶことができました。
私は懇親会にも参加しました。大学の先生や学生のかたと話すことができ、私の研究内容であるフェアトレードについて調べきれなかった部分を教えていただくことができたり、大学生活の話を聞いたりと、とても有意義な時間となりました。また、福岡県、北海道、愛媛など、遠方から来た高校生とも交流し、意見交換することができて、本当に楽しかったです。
2日目は、1日目の分科会ごとに選ばれた優秀な研究発表を、大ホールで見ることができました。選ばれた生徒たちは、研究の内容、プレゼン能力、質問への受け答えのスキルのレベルが、本当に高く圧倒されました。
閉会式では、松繁先生やヴァージル・ホーキンス先生から全体へのメッセージをいただきました。この中で研究にとって大切な次のようなことを学びました。
・一つのスライドで言いたいことを一言で伝えられるか確かめてみるということ(ワンスライドワンメッセージ)
・本当に自分の結論が正しいのかを、仮説を立てて追求した上で、どこまで調べることができ実証できたのかーつまり自分の研究の限界を伝えるということ
・勝手な考えや見聞きした情報を鵜呑みにせずいろいろな視点から世界をどれだけ客観的に見られるかということ
・利害関係や因果関係を考えるということ
《反省していること》
コンファレンスに応募する時に、まず2000字の論文を送りました。このあと、出場合否の通知と同時に個人的にアドバイスをしてくださいました。それをもとに論文を作り直し、パワーポイントをつくり再び送りました。このときに、探究の講座の先生と相談を何度もし、試行錯誤を繰り返す必要があったと思っています。大学の先生から、「大学院生の発表に対するのと同じレベルでコメントをする」と事前に言われていましたが、研究の不十分なところを厳しく問いただされ、戸惑ってしまい冷静に対応できませんでした。また、発表原稿の作り込みが不十分だったために言いたかったことをうまく話すことができなくて悔しい思いをしました。
また、他の生徒がどんな内容のプレゼンをするのかの予定が事前にわかるので、少し調べておけばよかったなと思いました。多少知っている内容のプレゼンを聞く方が全然知らないものより、納得し、楽しんで聞くことができたからです。
《後輩の皆さんへ》
この2日間を通して、出場して実際に発表するのはもちろん、発表を見るだけでも大きな価値があると思いました。ぜひ今後も千里高校の生徒がこのコンファレンスに出場してほしいと思います。
>第4回国際公共コンファレンスについて詳しくはこちらへ→ https://ouconference2018.wixsite.com/ou-conference