社会課題に対し、利害関係者がWin-Winの関係になるような解決策を考えるーこの学習に、あおぞら財団から栗本知子研究員を講師に迎え、ロールプレイを中心とした参加体験型学習を行ないました。「あおぞら財団」は、大阪・西淀川公害訴訟の企業との和解金の一部を基金に設立された「公益財団法人公害地域再生センター」の愛称です。
1時間目のロールプレイでは、生徒たちは5人グループの中でそれぞれ異なる役割カードを渡されます。市役所の担当係長・公害患者の親・工場の経営者・地元の医者・工場で働く住民です。与えたれたシナリオからスタートし、その後は自由に合意のための話し合いを進めていきます。2時間目は、大阪・西淀川での和解に至るまでの経緯と日本の公害対策法制の変遷を学習しました。
■講 師:
栗本知子氏(公益財団法人 公害地域再生センター:あおぞら財団 研究員)
■実施日:
10月23日(5,6限)、・24日(2,3限)■形 態:
国際文化科1年生全員(160名)対象に, 「国際理解」の授業で, クラス単位で各1時間■ねらい:
・国際問題が地元にも存在することを実例を通して知る
・利害調整が必要な問題を解決の難しさを知る
・異なる立場にいる人をどのように想像し意識を向けるべきかについてロールプレイを通じて学習する
・地元の実践家との出会いを通して、自らの生き方について刺激を受ける
■授業の流れ:
・前年度まで「ロールプレイ+西淀川の事例紹介」を1コマで行っていたが、今年度は、2コマに分けて実施ししました。
・1時間目のロールプレイは本校教員が担当、翌週の2時間目は栗本氏に事例紹介をしていただいた。生徒を動かすのは教員が行うのが効率的、経緯の解説は実際に問題に携わった方に行っていただくのが説得力があると考えました。
その後、西淀川の事例がどのようなプロセスで解決されたのかを具体的に紹介していただきました。
■生徒の受け止め(「振り返りアンケート」から)
・今回の授業で3つのことを学んだ。1つ、一方の意見の受け入れは全面的解決につながらない。2つ、妥協案は解決にならない。3つ、問題解決には新しい案を示す必要がある。
・問題解決とは、どちらにとっても将来が明るくなるものであって、どちらかが、あるいはどちらもが我慢をすることではない。これらのことがわかって面白い授業でした。
・互いの主張が食い違っていても、それを解決できる方策があるんだということを学んだ。20年かかったと聞いて本当に驚いた。あきらめてはいけないと思った。
・いろいろな立場の人がいる中で全員が納得するのは難しいと思った。多角的な視点を持つということはお互いを理解しあわなければならないということがわかった。
■取り組みを終えて
○生徒が直後に書いた「ふりかえり」の文章からは、立場の違う関係者の意見調整の難しさ、そして、対話の大切さを感じていることがわかります。
○ 同じく「ふりかえり」の文章から、公害問題については習ったことはあるが、関係者の思いまで知ったのは初めてで、さらに学びたい」という記述がありました。一般的な知識と具体的な事例の往復の大切さと、この授業の意義が認められます。